KUROTOKAGE

黒蜥蜴

小説黒蜥蜴そして戯曲、映画

【黒蜥蜴】…と云われて真っ先に思い浮かぶのは、やはり江戸川乱歩の小説黒蜥蜴であろう。最も当たり前だが此れは日本人の場合には…と云う事である。海外でも訳されているのではあろうが、【芋虫】等とは基本的に位置付けが異なり、余りインパクトは無かったのではないか?実はN個人に於いても同様で【小説黒蜥蜴】はそれほど長くない作品のくせに最後迄読むのに骨の折れる処があった。難解で骨の折れる作品は少なくないが、此の場合其れとは逆の意味で骨が折れたのである。
後書きの中で正直に述べられている箇所があるので一部を此処に記しておこう。

「【黒蜥蜴】は戦前の私の多くの通俗連載小説の1つで、私の小説では唯一の女賊ものである。美しい女賊と明智小五郎との、恐ろしくトリッキイでアクロバティックな冒険物語だが、この二人、追うものと追われるものの、かたき同士が愛情を感じ合う。三島由紀夫君はその女賊と探偵との愛情に重点を置いて脚色されたようである。筋はほとんど原作のままに運びながら、会話は三島式警句の連続で、子供らしい私の小説を一変して、パロディというか、バーレスクというか、異様な風味を創り出している」
と、まあこんな具合に述べられているのだが、全く其の通りであろう。三島由紀夫の【戯曲黒蜥蜴】が創り出されなければ此れ程【黒蜥蜴】と云う或る種独特の魅力を持つブランドイメージは存在してはいなかったであろう。また、其の【黒蜥蜴】の魅力的なキャラクター造りに一役も二役も買う事となるのが美輪明宏である。恐らくは彼女?が黒蜥蜴の印象と云ったものを決定付けたのだろうが、時代が吸い寄せた諸々のファクターが複雑に重なり合って完成した奇跡の産物の様に思われる。

美輪以外にも演劇は幾度となく開催され、また映画も何本も上映された。
中でもNのお気に入りは深作欣二の映画【黒蜥蜴】だ。当時未だ薄汚れていて通路が小便臭かった池袋の文芸地下にて拝見させて頂いた記憶がある。実際素晴らしく雰囲気のある作品に仕上がっている。三島由紀夫が飛び入りしているのは微妙だが、他は旨い具合にキャストが組まれていて関心する。
ところで
此のタイトル【黒蜥蜴】こそは最も重要な意味を持つ。
それにしても何と怪しくも淫美な気品を漂わせたネーミングであろうか…ただ此の微妙な風合いを感じ取る為には漢字に慣れ親しんでいることが求められる。こうした事は今回に限った事ではないが、N的には漢字圏に生まれた特権の様にさえ思えてしまう。そう考えるなら、やはり其の生みの親は江戸川乱歩であると云えるのかもしれない。

上記記事UP 20130216





海外劇場上映版ポスター Black Lizard